#23-1. ニューイングランドの夏

cpamonthly2005-01-26


巽孝之 ウェブ上では何と半年もお休みしてしまったことになります。すべてお互いの仕事が忙しいためですが、ほんとうは夏休み明けにでも、小谷さんの9月末のデューク大学集中講義を中心に、第23回としてお届けできるはずだったんですよね。

小谷真理 すいません、すっかり出遅れてしまって! 夏休みの8月末から9月初めまでは、二週間ほどかけてニューイングランドを廻って、ブラウン大学ではH.P.ラヴクラフトとエミリ・ディキンソンをこよなく愛するバートン・セントアーマンド先生のお宅、マウントホリヨークでは作家マイケル・キージング邸を泊まり歩いていたから、その報告もするつもりでした。とくにエミリ・ディキンスンのお兄さんであるオースティン・ディキンソン邸―これはエヴァーグリーンと呼称されているのところですが―にも初めて入ってきました。まー、お化け屋敷みたいに荒れ放題でしたが、まだ残っているところがすごいですね。19世紀ニューイングランドの名家には、ウィリアム・モリス的なラファエロ前派の影響が色濃いことを再確認したので、とても刺激的な旅でした。四年前にも行ったハートフォードマーク・トウェイン邸も再訪したり、ニュー・ベドフォードの捕鯨博物館でジョン万次郎中心の特集展示を見たり。捕鯨船のレプリカも、海員教会の説教壇もよかったなあ。
 あとボストンではブランダイス大学教授のマイケル・ギルモア邸も久々に訪問したし。ちょっとした「お宅拝見」旅行でしたね(笑)。

 コーネル大学大学院の同級生だったシェイクスピア学者ビル・フレッシュ君もいまブランダイス勤務なので、ギルモア邸では久々の再会を楽しみました。彼は学部がイェール出身のせいか、むかしはしょっちゅう「イエール脱構築派」のTシャツを着てたのが印象的だったけど。15年ほど前には、国際シェイクスピア会議のために来日もしてたんですよ。

小谷 ビルは、『黄金の羅針盤』の作者フイリップ・プルマンと親しいので、その話で盛り上がったり。彼自身の力作プルマン論も送ってくれましたよね。

 その直後、いったん帰国した小谷さんはゼミ合宿をはさみ、9月末から二週間ほどデューク大学に単独滞在。正確には、友人のマーク・ドリスコルとダイアン・ネルソンがチャペルヒルに3階建ての豪邸を買ったというので、そこに転がり込んでデュークへクルマで出勤していた。非常に収穫が多かったようなのでさっそくそのときの往復書簡をここにアップしようとしたら、雑誌媒体のPanic Americana第9号のほうが編集進行上のピンチとかで、毎号の対談企画をこの往復書簡で急遽ふりかえたというわけです。ですから、小谷真理デューク大学集中講義詳報に関心のある向きは、ぜひとも本誌第9号掲載の対談を実質上のCPA Monthly第23回として、今回のウェブ版第23回をその実質的続編として、お読み下さい。(申込先はこちら)