#24-8. SFが何回も終わるのは終わらないからである

高橋:商業誌におけるSFの歴史について教えていただけますか?

早川書房の『SFマガジン』は1959年の暮れが創刊で、公式には1960年2月号ですけど、そのあとどんどん発展して、70年代後半にはSF専門誌が半ダースはひしめいていましたね。『SFマガジン』の他にも、『NW-SF『奇想天外』『SFアドベンチャー』『SF宝石』『SFイズム』、それにSF批評の専門誌でわたしも創刊に関わった半商業誌『SFの本』に至るまで…。きっかけは1973年の小松左京日本沈没』が400万部の大ベストセラーを記録し、77年にジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』が公開されて大ブームとなりスター・ウォーズ特需が来たことでしょう。それからずうっと経って95 年に庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』が放映され、96年にエヴァ特需が来る。97年がそのピークで、『スター・ウォーズ』からきっかり20年。ちょうどそのころ「この10年のSFはクズだった」かどうか、という論争が起こっている。特需が去って、今はまたもや『SFマガジン』一誌だけですが、しかし徳間書店は2000年から日本SF新人賞を創設して有力な新人作家を少なからずデビューさせていますし、早川書房も日本の新鋭作家の新作をせいぞろいさせたシリーズ<Jコレクション>に加え、今年2005年からは日本SF評論賞を立ち上げましたから、いまは再び建設的な時代になっていますね。

高橋:昔から何かあるたびに、というより話題がなくなるたびに「SFは死んだ」という説がでますが、私はそれに対しては懐疑的なんですよ。今はヤング・アダルト小説の世界で、SFはかなり充実していると思います。上遠野浩平とか乙一とか。

小谷:いい趣味してますね(笑)。

高橋:(テレる) あとはもろにマリス・ミゼルなイラストを伴った、吉田直の『トリニティ・ブラッド』シリーズ。これはファンタジーに入るんでしょうが、なかなか凝ったつくりで私は好きですね。それから瀬尾まいこの『卵の緒』も、文学ですがSF的虚構をうまく使った傑作だと思います。というわけで、人がものを考える限り、人間が「可能性」について思索する生き物である限り、SFは生まれ続けることをやめないと主張したいです。…と思わず熱く語ってしまいましたが、そろそろお時間になってしまったようです。本日はお忙しい中、トークショーに出演して下さり、誠にありがとうございました。お二方には改めて感謝の意を捧げたいと思います。

(拍手)

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レア同人誌、大展示!

トークショーの後、巽氏・小谷氏が御持参下さったSF同人誌の展示会が行われ、ものによっては即売も可能ということで、会場は一気にコミケ状態に。特に" 佐藤嗣麻子さんをはげます会"発行の同人誌は、萩尾望都のフルカラーイラストに加え、山岸涼子今市子吉田秋生等がイラストメッセージを寄せており、垂涎の的。わたしは野阿梓のイラストが表紙を飾る『科学魔界』No.44、同じく彼の創作小説が掲載されているNo.45を入手した。いずれも20字三段組みでボリューム満点である。また、前々から情報に飢えていたファット・フェミニズムに関する写真集Women En Large、さらにミニコミ『テクスチュアル・ハラスメント訴訟中間報告』を入手できたのは大変貴重な収穫であり、実は満足であった。今度はこれらの本の書評を書きたいと、意欲を新たにしている。