#19-1.JFK40周年のマイケル

cpamonthly2003-12-23


巽孝之 気がつくとまたクリスマス直前。これがすむとMLAのためのサンディエゴ出張ということで、その合間をぬって書いてるんですけど、学部や大学院含めてゼミ単位で考えれば、昨年の特集タイトルどおり、またまた「驚異の年」が続いてしまった印象です。そのため夏休みのトロント出張や9月のゼミ合宿、10月の名古屋での日本アメリカ文学会全国大会、11月の札幌公演出張、それに12月のOB会まで、またたく間に過ぎ去ってしまいました。
 ということで年納め総ざらい。なにしろOBだけをとっても、7期生で女優の依田由布子君が劇団・燐光群の代表作『屋根裏』に出演してNHKテレビで放映されたのも朗報ですが、6期生の宮本菜穂子君がライマン・フランク・ボームの新訳へ挑戦して『オズのふしぎな魔法使い』(松柏社)を、10期生の千木良悠子君が第一小説集『猫殺しマギー』(産業編集センター)を出しましたね。7期の向山貴彦君の<ビッグ・ファット・キャット>シリーズも順調に巻を重ねてるし。また大学院ゼミ出身でいま本塾助教授である常山菜穂子君が博士論文を全面的に加筆改稿して『アメリカン・シェイクスピア』(国書刊行会)にまとめあげている。このあたりは、Panic Americana最新号の第8号で大々的に特集されていますから、ぜひご一読を。ともあれ今年度後半は、OB/OGを含め、ゼミ生の才能が順調かつ着実に花ひらいた記念すべき数ヶ月でした。2004年の年明けには、さる大手新聞によるパニカメ取材の記事も出るようなので、どうぞお楽しみに。 
 そうそう、先週末、つまり12月20日(土)には、われわれはそろって大阪市立大学で開かれた英語圏文化研究会の第一回総会で講演してきたわけですが、その当日の朝には小谷さんの最新刊で単著としては第六著書にあたる評論集『エイリアン・ベッドフェロウズ』(松柏社)の見本が刷り上がり、担当編集者である森有紀子さんが、会場まで届けて下さいましたね。

小谷真理 最初は、いったいどうしてパンクなあたしが格調高い英米文学者の集まりにお呼ばれなのかよくわかんなかったけど、講演のレスポンスで『キャプテン・ハーロック』のジェンダーについて質問した青年がいて、なかなか鋭かったなあ。わたしもつい最近『銀河鉄道999』のボックスセットのブックレットで、メーテルとエメラルダスが姉妹だったつうことを知って腰を抜かしたんだけど。
 英語圏文化研究会は若手中心のエネルギーにあふれている上、アットホームで、終わってみるとずいぶん楽しかったですね。
 二次会が天王寺のイタリアン・レストラン「Comuso」だったのは、けっこう教授の趣味でしょう(笑)。そのあとは松柏社の森さんが三次会というか実質的な出版記念をやってくれるとかで、ゼミ代かつ阪神タイガース・ファンの富山君も一緒に、梅田まで繰り出し、かな〜りゴスな店「キリストン・カフェ」へ行ったら、何と森さんが生まれたての本のためにバースデイ・ケーキまで注文してくれて、気がついたら何と明け方5時(笑)。
 タクシーで天王寺東映ホテルへ戻り昼ごろに起き出して、今度は、わたしにとってのメイン企画、関西SFファンダムの重鎮・大迫公成さん道子さんご夫妻や川合康雄さんや岡田靖史さんたちに連れられて、いま話題の北浜の「レトロビルヂング」にて遅いランチ。三時にはまたまた梅田で阪大教授兼辻テルミニストの菊池誠君と久美子ちゃんとも合流、「トレビ」でえんえんダベってた。いや〜楽しかった、ワールドコンみたいなノリで。これは、完全にSFイベントですね。『マトリックス』の話が出来て、まんぞく〜。でも、『カリブの海賊』と『英雄』のお話もしたかった!  
 で、結局、6時すぎの新幹線に乗ったのかな。

 菊池君は、このところ土日にライヴが入ることが多いみたいで、この日はエレキギター担いでましたね。そうそう、一月には朝日新聞社の週刊誌<AERA>が「蘇るプログレ」なる特集をやるんで研究室にて取材を受けたんですけど、菊池君みたいな、昼は物理学教授、夜はミュージシャンというライフスタイルにも、記者のかたはすごく関心を持ってたみたい。たんなる音楽としてでなく生活感覚の構造深くに根をおろしたプログレを掘り下げたいっていう視点は、なかなかイケると思うんですよ。
 ところで、今回のCPAでは、時間との闘争もあるので、先月11月22日から一週間ほど、メキシコシティで開かれた国際ペン大会の話題に絞りたいと思います。われわれは、かつて10年ほど前だったかな、ラリイ・マキャフリイ夫妻のクルマでサンディエゴから遠くない国境付近のティワナに行って半日ほど遊んだことはあるものの、実質上、滞在したということでは初めてのメキシコ体験だったし。
 というわけで、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺40周年にあたるずばりその日の11月22日に、われわれは暗殺現場となったダラスにて飛行機を乗り換え、メキシコシティへ向かったわけですね。空港の売店JFKを一面にフィーチャーしていた<ダラス・モーニング・ニュース>や<USAトゥデイ>を買ってしまいましたよ。最近では、JFK暗殺の真犯人は、もちろん当時の副大統領で次期大統領のリンドン・ジョンソンだ、といういささかまっとうすぎる(?)新説も出ている。もっとも今回、ホテルでCNNその他のTV放送をつけておいたら、そのほとんどが「マイケル・ジャクソン逮捕」のニュースばっかり、だったんですけどね。そういえば、マサチューセッツ州のゲイ・カップル結婚が承認されたのを、ブッシュ大統領が「結婚は男女がすべきもの」と非難したのも、ずいぶん話題になっていた。
 
小谷 ダラスには、16年前にアンドルー・ワイエスのヘルガ展覧会があったので立ち寄ったけど。ナマズのフライを食べたりして。お、あれは新婚旅行のとき。
 さて、そもそも今回の最終目的である国際ペンクラブは、作家や芸術家の権利を守るために結成された世界的な組織で、SFファンとしての価値観からいうと2代目の会長がH.G.ウェルズというとこが重要(笑)。ちなみに日本ペンクラブの初代会長は島崎藤村。ここに女性作家委員会というのがあって、わたしはいま、その創設者であり今年亡くなられた三枝和子先生を引き継いでそこの委員長をやってるわけなんですね。それで、今年は国際ペン大会の女性作家委員会にも出席してみよう、と思い立ったわけです。