#17-4 関西2003年初夏

:さいごに我が国の演劇のほうですけど、ここんとこ、ゼミOG依田由布子君の出た燐光群の『屋根裏』とか千木良悠子君の出た指輪ホテルの『情熱』も観たりして、それぞれ活躍ぶりを堪能しましたが、何といってもスタジオライフの『トーマの心臓』が百回を超える公演ののちに、一区切りということで、春休みには二度も足を運びましたね。
 萩尾望都さんのお誘いで、最初は3月9日に品川のアートスフィアで、二回目は3月26日に大阪のドラマシティに一泊までして。

小谷:すばらしかったですね。さすがに百回公演ともなると、役の理解が半端じゃない! じつに見応えがあったし、終わった後、役者のかたともお話させていただきましたが、原作の解釈についていろいろ発見があって、ほんっとに興奮しました。だれがだれを追いかけていたかということが舞台では目線でよりはっきり描かれていて、とくにユーリとトーマのあいだの謎めいた関係性が明確なんですね。原作ではさらっと流してあるところもそのために、逆に意味が深いのだ、ということがわかったり。今回はトーマの死というひとつの闇に対する各キャラクターの解釈の比較がはっきりしてきて、よかったです。少女的なロマンティシズムも板についてきましたしね。 

:演出の倉田淳さんは、ほんとうに深く作品を読み込んでいる。萩尾作品は、こんどロック漫画『アメリカン・パイ』が宝塚で上演されるようになったから、こちらも楽しみなんですけど。先日、神戸のアメリカ学会に行ったら、阪急電車の吊革広告がこのミュージカルであふれかえっていて驚きました。
 そういえば、つい最近始まった、同じスタジオライフによる樹なつみさん原作の『OZ』もおもしろかったな。6月13日の夜の部を観たんですけど、漫画のときはぜんぜん意識していなかったんですが、今回改めて、あの作品がいかにタイトルどおり『オズの魔法使い』に忠実に準拠しているかわかりました。そうそう、ゼミOG宮本菜穂子君の新訳による『オズのふしぎな魔法使い』も7月には松柏社から出るので、みなさんどうぞお楽しみに!   

6/17/2003