#11-2. 9月11日危機一髪!

  それで、9月4日に帰国してすぐ、新井素子さん肝煎りのホシヅルの日があったり、夢枕獏さん肝煎りの萩尾望都さんの『残酷な神が支配する』完結記念パーティがあったり。そうこうしてるうちに、9月11日には例の世界貿易センターペンタゴンのテロ事件でしょう。

小谷 教授は、ほんとはそのころまでアメリカにいる予定だったのよね。

  そう、9月2 週目の週末は、友人の日本研究者スーザン・ネイピアが参加する文化研究会議がインディアナ州のデュポー大学開かれるから同じパネルに出てくれないか、という招聘を受けてたんですね。スーザンには、昨年5月のゼミの時間に特別講演してもらってるし、デュポー大学に行けば、いま<SFスタディーズ>で一緒に編集委員をやっているイシュトヴァーン・チチェリイ・ローナイにも会えるし、これは一石二鳥、と膝を叩いたのはたしか。ところが、その依頼があったのが7月に入ってからで、そのときにはもう夏の旅程をぜんぶ組んじゃってたんで変更不可能になってたわけです。われわれは絶妙のタイミングでテロを免れたのかもしれません。

小谷 あのときは、アメリカの友人たちとのメールがひっきりなしにで、ほんとうにたいへんでした。みんなぶじだったからよかったけど、心底怖がってるみたいな反応も多くて。

 わたしも、まさか自分が去年から一年間<ユリイカ>に「<南北>の創生」を連載してリンカーン暗殺を主題にしてたところへ、現実のテロが起こったからショックでしたね。そのこともあって、わたしにはあれはいまもたんなる「爆破」というよりは「暗殺」の一種のように見えるんです。あのニュースのせいで、 CPAマンスリー更新の絶好のチャンスがいちど失われてしまった。
 さらには、9月4週目の八ヶ岳ゼミ合宿期間をはさんで、小谷さん自身が東浩紀氏の企画したシンポジウム「網状言論F」(9月16日、於・池袋メトロポリタン・プラザ)に出席するわ、三枝和子さんが司会する「世界女性会議」(9月23日、於・国立京都国際会館)でもパネリストを勤めるわで、もうたいへん。しかも、後期が始まると、こんどは白百合女子大学の非常勤だけじゃなくて、慶應義塾大学でも久保田万太郎記念講座特別招聘講師になっちゃったわけですね。

小谷 ぜんぶ火曜日にまとめたから、何とかなってるようなものですけど。でも、あたしはもともと「書斎の人」だから、ほんとうはあんまり家の外に出たくないの。本だけ読んで静かに暮らしていたいのよ。料理と家庭菜園の手入れをして。ラン子ちゃんをかわいがって。

 そうはいっても、今年は小谷さんの共著もずいぶん出ましたよね。ジョアンナ・ラスの『テクスチュアル・ハラスメント』や再刊成った『サイボーグ・フェミニズム』以外にも。

小谷 まず工作舎からは杉浦康平さんたちがおまとめになった『まだらの芸術工学』があるし、岩波書店からは筒井康隆さんがおまとめになった『現代世界への問い』があるし。